そうやって、私の心の一番大切な場所を彼女は奪った。
私は幸せだった。この想いが報われることはないだろうけど、それでも彼女の隣にいるのは自分だけ。恵子が寄りかかる相手は私だけ。
それだけで十分だった。
十分だったのに―――
ある日、玲緒奈に部活の応援に行かないかと誘われた。
彼女はミーハーな所があるので、どこぞの部活の活躍を耳にして自分も行ってみたくなったのだろう。
私はちょうど描いている絵が完成間近で、早いところ終わらせたかったのでそれを断った。すると彼女は、
「いいよー!恵子ちゃんと一緒に行くもん!」
と言って恵子の腕を取った。
私といつも一緒にいることで、恵子は玲緒奈とも比較的仲良くなっていた。
私としても自分が常に彼女を一人占めしている事を後ろめたく思っていたため(実際のところそう考える必要はないのだが、想いを隠して傍にいる事に負い目を感じていたんだと思う)、恵子が構わないなら強いて止める事もないだろうと思った。
恵子は若干の躊躇いは見せたものの、数少ない友人の頼みを断れるはずもなく玲緒奈に付いていく事となった。
・・・それが、最大の失敗だった。
休みが明けて月曜。
いつも通りの時間に登校した彼女は、いつもと少し雰囲気が異なっていた。
何というか、いつも以上にぽーっとしている。
見るからに心ここにあらずといった調子で虚空を見つめているのだ。
「恵子、おはよう」
私が声を掛けても、顔をこちらに向けるだけで返事がない。
「・・・・・・・・・ぁ!お、おはよう!」
と思ったが少し待ったらちゃんと返してくれた。
わたわたとしているが、そんなのはいつもの事なので気にならない。その事は、気にならないのだが―――
「・・何かあったの?」
非常に、嫌な予感がした。
果たして、その予感は多いに的中した。
玲緒奈と一緒に訪れたバレー部の大会。そこにとてもかっこいい女性がいたのだという。
見城遥。
そういった事にあまり興味のない私ですら名前を知っている、この学校のスターの一人だ。
スポーツ推薦で高等部から入学し、一年にして部のエース候補としてスタメン入り、二年になった今は名実ともにエースとして今のバレー部を牽引しているという。
ファンの子達にも優しい事で有名で、非公認のファンクラブも結構な人数になっていると聞くし、何かと話題の絶えない先輩だ。
そこからの恵子の話は、いかに見城先輩が格好良かったかという事に尽きた。
曰く、「足が長くてすらっとしてる」「横顔が凛々しい」「ジャンプが高くダイナミック」「スパイクが誰にも止められない」などなど・・・
心が昂っている様子で、見城先輩が、見城先輩がと捲し立てる。
・・・その時の彼女の表情。
『すごい・・・華凛すごい!私こんなに上手な絵、初めて見たもん!』
それは以前に一度だけ、私も見たことがある顔。
『ううん、華凛が一番すごい!他の皆にとってはわからないけど、私にとっての一番は華凛だよ―――』
(ああ・・・・)
そして私は、自分が彼女の一番でなくなったことを知ったのだ。